オーラルフレイル・
口腔機能低下症
お口のトラブルの早期発見・
早期治療に努めています

皆様は、「オーラルフレイル」という言葉をご存知でしょうか。口腔を意味する「Oral(オーラル)」と、虚弱や老衰などを意味する「Frailty(フレイル)」を組み合わせた造語で、「加齢によって口腔機能が衰えている状態」を示す言葉です。健康なお口から、摂食・嚥下障害などの「口腔機能障害」へ移行する途中段階には、「オーラルフレイル」が進行して「口腔機能低下症」という病態が存在し、できるだけ早い段階で治療を行うことが、全身の老化を防ぐカギになります。「食べること」は人生の大きな楽しみですから、お口にトラブルが生じると、QOL(生活の質)まで低下してしまうのです。
当院では、地域の皆様のお口のトラブルの早期発見・早期治療によって、要介護のリスクを下げ、生涯にわたって「美味しく食べられること」をお手伝いしたいと考えています。
口腔機能の役割
-
お口にはさまざまな役割があり、中には何気なく使っている機能もあります。主な口腔機能としては、以下のようなものがあります。どれかひとつでも口腔機能が欠けてしまうと、食事や体調に影響を与え、生活に支障をきたす恐れが出てきます。
-
1かみ砕き、飲み込む
食べ物を嚙み砕き塊状にまとめることを咀嚼(そしゃく)とも呼び、よく噛むことで脳に刺激を与え、顎の骨や筋肉に刺激を与えます。飲み込む動作は嚥下(えんげ)といい、咀嚼によって細かくなった食べ物や飲み物を消化管へ運びます。この時、気管に入らないように反射によって防御します。
2唾液の分泌
唾液にはいくつかの機能があります。主な働きとして、①咀嚼と嚥下をしやすくする、②歯や粘膜の保護、③抗菌作用、④歯の再石灰化作用などがあります。咀嚼によって唾液量は増加します。
3表情をつくる
笑顔や怒りなど、口もとの形で表情をつくります。人としてコミュニケーションを図るうえで大切な機能です。
4言葉を発音する
言葉を発することは、歯・顎・口唇と舌の形と動き・口の周囲の筋肉の機能や形によって行われます。歯並びや舌などの形態と機能の問題から、正しい発音ができないことがあります。
5噛み合わせの力と感覚
噛み合わせ(咬合)が悪いと食事だけではなく、嚥下も難しくなり、身体の骨格や筋肉のバランス、平衡感覚など運動機能にも影響を与えます。
口腔機能を
向上させることの効果
-
虫歯・歯周病の予防
口腔内の健康が維持でき、清涼感も得られるため、気分や情緒の安定につながる
-
口臭予防
家族や友人達との積極的なコミュニケーションにつながる
-
唾液分泌の促進
十分な唾液を分泌することで会話や飲み込みなどがスムーズになる
-
風邪・
インフルエンザ予防外部からのウィルスに対し、抵抗力を高める
-
誤嚥性肺炎の予防
口腔内常在菌の異常増殖を抑制することで、肺炎のリスクを弱める
-
味覚の回復
舌や粘膜の清掃・刺激により、食べ物の味が分かるようになる
-
構音の改善
口唇や舌を訓練することによりはっきりと発音できるようになる
-
低栄養予防
なんでも食べられることで、栄養の偏りを防止する
-
運動機能の回復
噛み合わせが安定することで身体のバランスを保つことができ、転倒予防につながる
-
認知症の予防
噛むという行為により脳への血流を促し、脳細胞をより刺激する
-
生活意欲の回復・
うつ予防食や会話を通して生活のリズムが改善され、社会に対して積極的になる
口腔機能の衰え(オーラル
フレイル)による悪循環
-
加齢によって口腔機能が低下してくると、固い食べ物が食べづらい・飲みこみづらいなどの初期症状が現れます。そうすると食べやすい柔らかいものばかり食べるようになってしまい、次第に噛む機能が低下していきます。
噛む機能が低下すると、更に噛めないものが多くなってしまい、食べること自体がおっくうになり、食欲の低下を招いてしまいます。食べる量が減ると低栄養になり、全身の筋肉が衰えフレイルが進み、サルコペニアと呼ばれる症状が起こります。サルコペニアとは、加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のことを指します。
サルコペニアになると、歩く、立ち上がるなどの日常生活の基本的な動作に影響が生じ、介護が必要になったり、転倒しやすくなったります。また、各種疾患の重症化や生存期間にもサルコペニアが影響すると言われています。
さらに悪化すると寝たきりになってしまいます。結果的に、図のように口腔機能の衰え(オーラルフレイル)から、全身の衰えへと繋がっているのです。
-
-
Step01
固いものを噛み辛くなった方へ
入れ歯が合わなくなってきたなどの症状はありませんか?
入れ歯
入れ歯が合っていないと上手く噛めずにどんどん口腔機能が低下していきます。
嚙み合わせは変化します。定期的にメインテナンスと嚙み合わせのチェックをしていきましょう! -
Step02
食事中にむせやすくなった方へ
最近食事中にむせやすくなった、食べこぼしが多くなったなどの症状でお悩みの方は、口腔機能が低下してきています。
口腔機能低下症
できるだけ早く検査と診断を受け、悪化しないようリハビリを行いましょう。 -
Step03
食べ物を
呑み込めなくなった方へ「口腔機能低下症」が更に進行してしまうと、摂食・嚥下障害などの「口腔機能障害」の恐れがあります。
摂食嚥下障害
食べたくても上手く食べられない・飲み込めないなどの症状でお困りの方は、摂食・嚥下機能が低下している可能性があります。
食べ物の形態や環境も含め、指導とリハビリを行います。
-
Step01
-
オーラルフレイルの
セルフチェックリスト- むせる・食べこぼす
- お口が乾く・ニオイが気になる
- 滑舌が悪い・舌が回らない
- 柔らかいものばかり食べる
- 食欲がない・少ししか食べられない
- 自分の歯が少ない・
あごの力が弱い
-
出所:公益社団法人日本歯科医師会リーフレット「オーラルフレイル」
口腔機能低下症とは
「口腔機能低下」とは、加齢により口腔内の「感覚」「咀嚼」「嚥下」「唾液分泌」等の機能が少しずつ低下してくる症状です。「口腔機能低下」を早期に発見し予防することで、生涯にわたり食べることを楽しみ、会話に花を咲かせ、笑顔が続く健康長寿を支えます。
「口腔機能低下症」は歯科で診断可能です。保険適用によって咀嚼嚥下含め、歯科治療とトレーニングを受けることができます。
当院で行う
口腔機能低下症の検査
-
下記7項目中で3項目以上に該当する場合は、口腔機能低下症と診断されます。
-
口腔不潔
舌苔の付着度を見ることでお口の中の清潔度を検査します。
専用機器で検査します。50%以上は異常です。【自覚症状:口の中が汚れる】
-
口腔乾燥
お口の水分量を検査します。専用機器で27.0未満は異常です。
【自覚症状:口の中が乾く】
-
咬合力低下
噛む力(咬合力)を測定します。
専用シートを用いて計測します。500N未満は異常です。【自覚症状:食べ物が口に残るようになった】
-
舌口唇運動低下
口唇・頬・舌の動きを検査します。「パ」「タ」「カ」の発音を5秒間で何回できたか計測します。
1秒当たり6回未満で異常です。【自覚症状:滑舌が悪くなった、食べこぼすようになった】
-
低舌圧
舌の力(舌圧)を測定します。口腔機能検査の中で最も大切で重要な検査です。
専用計測器を用います。30kpa未満は異常です。【自覚症状:薬を飲みにくくなった】
-
咀嚼機能低下
グミゼリーを噛んで咀嚼能力を検査します。
専用測定器を用いて100㎎/㎗未満は異常です。【自覚症状:硬いものが食べにくくなった】
-
嚥下機能低下
嚥下機能を調べるための10問のアンケートに答えてもらいます。
【自覚症状:食事の時にむせるようになった】
口腔機能低下症 診療の流れ
-
-
Step01
検査・診断
7項目の口腔機能低下症の検査と診断を行います。
口腔不潔、口腔乾燥、咬合力測定、舌口唇運動機能測定、舌圧測定、咀嚼機能測定、嚥下機能低下 -
Step02
管理計画の立案
検査結果に応じて、一人ひとりに合った予防・リハビリメニューを立てます。
-
Step03
管理計画の患者等への
説明・同意患者様への検査結果の報告と、具体的な予防・治療計画の説明を行います。
-
Step04
口腔機能低下症の管理
予防・治療計画に同意していただいた場合、機能訓練の指導、生活指導、栄養指導などを行い、口腔機能低下症の対策を行っていきます。
-
Step05
再評価
改善が見られたかどうか、診察と検査を行い、再評価と再指導を行います。
-
Step06
継続管理
再評価後も継続して予防・治療を行っていきます。
-
Step01
口腔機能低下症の症例
-
義歯を新製し噛める環境を整備し訓練を実施しました。
それにより舌の機能が向上し舌苔が減少し、舌のボリュームが増加しました。 -
口腔支援デイサービスのご紹介
当院には、口腔リハビリを行う「口腔支援ステーション 虹テラス和合の里」が隣接しています。できるだけ早い段階から口腔ケアを初め、フレイルを予防・改善していきましょう!