様々な歯を補う治療法
歯の治療は、いろいろな方法を使い、できる限り歯を大切に残すことがまず基本です。しかし、残念ですが、すでに重度の歯周病や、むし歯が骨の下にまで進行し、残った根の長さが不十分な場合、外傷などの不慮の事故の場合など、抜歯をする必要があります。抜歯後は、そのまま放置すると、周囲の歯並びを悪化させ、歯ブラシなどを難しくし、さらにかみ合わせにも問題が現れることがあります。
そのため、抜歯後は代用物で元の歯の状態を再現する必要があります。
ブリッジ

抜歯した両隣りの歯を削って、型取りし、セメントで装着する方法です。この方法の最大の欠点は、健康な歯でも削らなくてはならない点です。
入れ歯

歯をたくさん削る必要はありませんが、顎の部分と金具が付くため違和感が大きく、食事の後は、入れ歯を外して洗浄する必要があります。
インプラント
失った歯の部分に、チタン製のスクリューを埋め込み、歯と同等なものを作り上げる方法です。手術を必要とする点と、保険外の治療行為であることが欠点ですが、元の歯と同じように、しっかりとかむことができる点が最大のメリットです。
チタンの生体に対する安全性は実証されており、長期的にも問題のない安定した方法であるとの見方が世界基準です。すでにアメリカでは、インプラントが抜歯後の処置の第1選択肢になっています。
当院では、アメリカ Zimmer
Dental社スクリューベントの認定を受け使用しています。
インプラントの症例
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左下臼歯の欠損にインプラントを2本埋め込ませていただきました。1次手術で、顎の中に歯の根に相当する部分(フィクスチャー)を埋め込みました。術前診断のレントゲン(左)と1次手術終了直後のレントゲン(右)です。
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術前にはCT撮影もしていただき、十分な診査の後、手術方針をご説明をいたしました。患者様には安心して手術を受けていただいています。完全滅菌を心がけ、感染対策を十分とり、ディスポーザブルのものを多く採用しています。
手術は、心電図、血圧、酸素飽和度等のモニターをつけ、監視の下行っています。 -
完全にフィクスチャーを埋め込み縫合して1次手術を終了します。1次手術終了から下顎は3ヶ月、上顎は6ヶ月の観察期間に入ります。この間、チタンのフィクスチャーと骨が結合し、一体化していきます。
最近は、埋め込み手術から早期に荷重をかけ、早くかめるように被せ物を入れる傾向にありますが、骨との結合に十分な時間を取り、安心して2次手術をお受けいただきたいため、従来からのマニュアル通り、所定の期間お待ちいただきます。ご了解をお願いいたします。
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2次手術は、歯ぐきからフィクスチャーを貫通させる目的と、インプラント周囲のブラッシングがしやすいように、硬い歯ぐきを形成するためにおこないます。
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2次手術を終えてからは、仮歯で歯ぐきの治癒を十分待って、最終の被せ物をセットいたします。当然、これで終了ではありません。定期的なメインテナンスに通って頂くことになります。
私たちは、インプラントを入れることが目的ではありません。患者様に長期間にわたって、健康で快適に生活していただくことが重要であり目標と考えています。ですから、インプラントの周囲にも起こる歯周病(インプラント周囲炎)を、患者様と共に予防してまいります。
当院の歯周病治療

インプラントを入れたから治療が終了という訳ではありません。インプラントの周囲にも起こる歯周病(インプラント周囲炎)にならないよう、予防・メインテナンスを行うことが大切です。
歯牙移植
私たちが治療する歯の中には、どんなに頑張っても、すでに手遅れで、歯を抜かなくてはいけない場合が残念ながらございます。そして、抜歯した後、そのまま放置することは歯並びや、お口のお手入れ、食事に悪影響を及ぼしますので、健康に生活するためには、元のかめる状態を回復することが必要です。
そんな場合、健康保険でブリッジや入れ歯(義歯)を作ることが一般的ですが、この方法は、健康な歯を削る必要があったり、違和感が大きかったり、お手入れが難しくなったりするデメリットがあります。
保険外診療では、インプラントというチタン製の人工歯根をあごに埋め込む手術を行い、歯を作る方法もありますが、費用がかかり、条件が悪いあごの場合は、骨を作る手術もあわせて行う必要があります。

そんなとき、条件が整えば、第4の方法として、自分の必要のない歯(かんでいない歯)を、歯を失った場所に移植する「歯牙移植」という方法があります。
歯牙移植の成功率は約80~90%といわれ、40歳以下の若年者で、抜歯後2ヶ月以内に移植を行うと、より成功率は高いと報告されています。
移植の歯は、通常親知らずを使うことが多いことから、インプラントの適用年齢よりは、比較的若い方が、ブリッジ以外の方法として選択することが多いと思います。
歯牙移植の症例
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この方は、35歳の女性で、左下の奥歯(6才臼歯)に痛みがあり、来院されました。レントゲンで、歯の根が縦に割れていることが確認できました。残念ながら、この状態では残すことは難しく、抜歯することを選択しましたが、幸い後方に親知らずがあったため、抜歯と同時にその親知らずを、移植しました。写真右下は抜歯直後の割れた歯と移植した歯です。
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抜歯してできる穴と、移植する歯がほぼ同じ大きさであることが理想ですが、今回のケースは抜歯してできた穴は大きく、移植歯はそれよりも小さかったため、術後の感染を少なくし、歯ぐきの治癒を早める目的から、理想的な歯の位置よりも深く埋めて、2ヶ月待ちました。
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その後、歯の根の治療を行い、歯ぐきの治癒を待って、歯をかみやすい本来の位置まで引き上げる矯正(挺出といいます)を行いました。
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その後は、仮歯でしばらくかんでいただき、骨の治癒を待ちました。
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最終の被せ物を入れたところです。
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移植後6年が経過していますが、歯の根や骨の異常はなく、患者さんも快適にお食事されているとのことです。
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もちろん現在もメインテナンスに、欠かさず来ていただいています。
移植が成功し、歯ができたことよりも、その移植歯も含めすべての歯を、健康に長期間使っていただくことが最も大切だと考えています。