
皆様は今まで、歯科治療と言うと、むし歯がほとんどではないでしょうか?
歯科医院は、むし歯になって治療をするところ、歯が痛み出してから通うところと考えていたと思います。
しかし残念ですが、削ってつめる治療だけでは、健康なお口を維持し続けることはできません。
治療に使った材料の平均耐用年数は、平均7年で10年に満たないとの報告があります。
きちんと虫歯の治療に通い、歯を磨いていても、歯の再治療が必要になってしまうのです。
その理由は、むし歯の穴を埋める治療を、歯科医師がどんなに丁寧に行っても、治療に使った材料と歯との隙間を全くなくすことは不可能で、数ミクロンから数十ミクロンの隙間が治療後必ず存在します。
しかし皆様は、このリスクの高い部分を意外とご存じではなく、治療によって「完治した。」と今まで考えていたため、そのわずかな隙間に平均1ミクロンのむし歯菌が侵入し、新たな虫歯がやがて発生してしまうことに全く気づかなかったからなのです。その結果、再治療を繰り返し、金属冠、ブリッジ、部分入れ歯、そして総入れ歯へと、進行してしまいます。

さらに厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、40歳までに、約半分の歯は虫歯治療を受け、詰め物や金冠が入り、45歳を過ぎる頃から、「歯周病が原因で抜歯が増え始め、50歳では2人に1人が部分入れ歯になり、80歳で4~6本程度の歯しか残らない状態になっています。
この結果から判ることは、虫歯の治療だけでは歯は残らず、健康にはなれません。
歯周病も積極的に治療する必要があります。

つまりこれからは、虫歯と歯周病の原因を本質から考え、治療する必要があります。
ここで皆様に知っておいていただきたいことがあります。それは、むし歯・歯周病は1本1本の歯に限られ発生する病気ではないということです。
原因は、お口全体にバイオフィルム(解説)と呼ばれる細菌の集合体が歯に付着するためで、
その結果、酸を産生する細菌が多く集まった場所に、むし歯の穴が結果として現われ、
歯周病細菌が多く付着した場所には、その細菌の出す毒素によって、歯ぐきの腫れや出血が現れ、やがて歯を支える骨が吸収し歯周病を自覚する結果となります。
つまり、今まで痛みがあったり、心配になり治療を受けた、虫歯の穴や歯ぐきの腫れや出血などは、バイオフィルムが引き起こした結果なのです。
ですから結果の処置を急ぐのではなく、原因を取り除くことがまず大切なことなのです。
もう一度言います。原因は、お口全体の歯の面に付着したバイオフィルムなのです。
では、実際にどのように治療を進めていくべきなのでしょうか?
それには4つのプロセスが必要不可欠です。
よく覚えておいて下さい。
(解説)バイオフィルムとは
バイオフィルムの一般的な定義は、硬い物質と液体の境界に、タンパクの膜が形成され、そこに細菌が層状に付着してできる細菌集団のことをいいます。歯も硬い物質で、唾液という液体の中には、むし歯菌や歯周病菌をはじめとする約700種類の細菌が生息していますから、歯に強固に付着した細菌集団もバイオフィルムと呼びます。
皆様は、歯垢(プラーク)と歯石という言葉をご存知だと思いますが、歯垢は細菌が付着して数日経過したもので、歯ブラシなどで除去可能な付きたてのバイオフィルムのことを言い、歯石は歯に細菌が付着して1年近く経過し、石のように硬くなった(石灰化)ものを言います。今までは、歯垢から歯石になるまでの過程が、省略されていましたが、この期間がむし歯、歯周病の治療、予防に重要な期間と最近は考えられています。
ですから、広い意味でのバイオフィルムは歯石、歯垢を含めたものであり、狭い意味では歯垢から歯石へ移行する間をいいます。
いずれにしろ、バイオフィルムは、細菌が強固に歯に付着したもので、抗生剤、唾液では除去することは不可能とされ、歯ブラシやフロスなどで物理的に剥ぎ取ることが治療の基本になります。

十分に問診をして、必要な応急処置の後は、お口全体を対象に検査し、感染の程度を調べ、治療方針を決定します。検査をしないで治療を開始することはしません。
内科の先生が、肺炎の治療を開始する前と治療後に必ず検査をし、結果を比較して改善したか判断するように、お口全体の検査が必要です。

むし歯・歯周病の原因はただ1つ、バイオフィルムです。
バイオフィルムは、歯の面に多数の細菌が複雑に絡み合い強固に付着したものです。
しかも、むし歯や歯周病の所見が認められる歯にだけ付着するのではなく、全ての歯に多かれ少なかれ付着しています。
そのため、全ての歯の表面からバイオフィルムを剥ぎ取ることが重要であり、これが基本治療です。
それでは、バイオフィルムを除去するための、基本治療を受けさえすればいいのでしょうか?
残念ですが、バイオフィルムを、私たちの力だけで全て取り除くことは、不可能です。
その理由は、皆様のお食事の取り方と、その後のブラッシングを中心としたホームケアに問題があり、バイオフィルムが形成されるからです。
ですから基本治療は、皆様にも協力して頂き、バイオフィルムを取り除くことが重要なのです。
健康なお口を作り上げるには、皆様の治療への積極的な参加が必要なのです。

(修復・補綴と私たちは呼びますが、機能回復を目的とした治療とお考え下さい)
基本治療が終了した時点で、必ず治療前と同じ検査を行います。
この検査の意味は、どのくらい治療開始時より細菌感染が軽減できたか?炎症がどの程度よくなったか調べるためです。お口の状態が改善されたことを確かめてから、皆様が今まで歯科医院でたくさんご経験された、いわゆる虫歯の治療にうつります。
詰め物や金属を入れたり、ブリッジや入れ歯などの処置のことです。
ここで重要なことは、大きなむし歯や重症な歯周病の歯だけを処置し、小さなむし歯は治療せず、メインテナンスで悪化させないように予防していくと言うことです。

むし歯の処置が終わると、皆様は完治したとお考えになっていませんでしたか?
確かに、痛みが消え、見栄えがよくなり、かめるようになるので、これで安心し生活ができると思われていたことでしょう。
しかし、その状態は、一生約束できるものではありません。
時間とともにバイオフィルムが再付着し始め、皆様が自覚しないまま、虫歯、歯周病が再び悪化します。
治療にかかった時間と費用を無駄にしないように、大切なご自分の歯を長く健康に保つために、メインテナンスをしていきましょう。
そのために、皆様の日々のホームケアがまず大切ですが、ホームケアだけではバイオフィルムを見落とす場所も出来てきますので、定期的に問題がないかチェックすることが重要です。
そしてバイオフィルムは、歯に付着してから約3ヶ月経過する頃から病原性が強まるので、3ヶ月に1回程度のプロフェショナルケアのため来院していただき、皆様の取り残したバイオフィルムを私たちが除去することで予防していきます。

メインテナンスでは何をするの?
お口の中のチェック
むし歯・歯周病・かみ合わせのチェックと、これまで治療した部分の確認をします。
歯磨き指導・相談
正しい歯ブラシの再確認をします。
悩まれていることや疑問など、何でもお聞かせ下さい。
健康アドバイス
お食事やおやつの工夫、フッ素の活用方法など、健康管理についてのアドバイスをいたします。
プロによる歯のケア
担当歯科衛生士が、歯磨きではとれない汚れや磨き残し(バイオフィルム)をクリーニングし除去します。
歯を強くするためのフッ素も塗布します。
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やむなく進行したむし歯がある場合は、歯科医師が治療いたします。
メインテナンスの研究報告から
日本でも欧米のように、予防のためのメインテナンスの効果が、たくさん報告されています。
そのいくつかを見ていただきます。
①12歳(小学6年生)でむし歯がゼロの
児童の比率は?

永久歯が生えそろう12歳で、すでに2本から3本のむし歯が永久歯にできてしまう現状です。
6年生でむし歯ゼロ この目標を達成するには、メインテナンスが絶対必要です。
12歳児のムシ歯ゼロ比率

ここで言う「ムシ歯ゼロ」とは、一度もムシ歯になったことのない場合を指します。
②50歳以上の方が10年間で何本の歯を失うでしょうか?
50歳以上の方が痛いときだけ来院して、その歯だけの治療を繰り返し、予防をしないと、10年間で約6本(2年に1本)歯がなくなっていきます。
メインテナンスを行っていれば、10年後も今と変わらない状態が期待できます。
③80歳以上で、自立した日常生活を送れている方はどのくらいでしょうか?
残っている自分の歯の数が…
歯の残存数は「痴呆症や寝たきり」と反比例しています。
痴呆症や寝たきりになりやすい方…
第1位、歯がぬけたままになっている。
第2位、自分の歯がなくても、入れ歯を使っている。
第3位、自分の歯が20本以上残っている。
歯の残存数と生活の関係
80歳以上の高齢者の歯の残存数と生活の関係。
…という統計がでています。
健康な歯を残すという事は、痴呆症や寝たきりになりにくいからだづくりに重要です。
上記の資料は、厚生労働省「歯科疾患実態調査」、日本ヘルスケア歯科研修会調査より引用しました。
メインテナンスの開始時期と、メインテナンスの割合を比較

是非、皆さん覚えておいてください。この診療の流れは欧米では常識なのです。
そして私たちと実行していきましょう。チームメンバー全員で皆様をサポートいたします。
では実際の治療の流れをご説明いたします。
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1 問診と診療システムの説明
専任の初診カウンセラーが皆様のお悩みや、ご希望を丁寧にお聞きいたします。
お口のトラブルにとどまらず、治療全般のお悩みなど、どんなことでも結構です。安心してお話ください。

時間をかけお聞きし、当院の診療の流れやシステムなども、簡単にお話させていただきます。
そのため問診とご説明に30分ほどのお時間をいただきます。
2 診査と応急処置
ご来院いただいた主訴が緊急性のある場合は、当然解決する必要がありますので、その部位の診査をし、治療内容をご理解いただけるようにご説明いたします。
治療内容に同意いただいた後、応急処置を行いますが、同時に主訴の多くは、むし歯・歯周病が原因ですので、根本的な解決を行う必要があることもご説明いたします。 そして主訴が解決した次回から、口腔内検査をさせていただきます。
基本治療の流れ
1 口腔内検査
基本治療を開始する前に、患者様のお口の状態を知るための検査が重要です。
項目は、歯周病の進行程度を知るためのポケットの深さ測定
(1本の歯のまわりを6箇所測定し、全ての歯を対象に調べます)と
歯のゆれ具合
現在進行中の歯周病の有無を知るためのポケットからの出血
むし歯がないか、歯を支える骨の状態はどうなっているのか知るためのレントゲン検査(お口全体を対象 10枚)
むし歯、歯ぐきの腫れや、赤み、かみ合わせ状態を知るための
お口の写真(13枚デジタル写真)
レーザー測定器によるむし歯の大きさ測定
以上の項目を調べ、現状と治療計画、期間などをご説明いたします。
これらの検査結果はプリントアウトしてお渡しもいたします。
お家でご自身のお口の状態を確認していただき、治療に関心を持って、積極的に参加いただきたいと考えています。

この検査は、基本治療中のステップごと、そして基本治療終了後のメインテナンスのときにも行い、比較し診断に使用します。
2 バイオフィルムの除去
むし歯、歯周病の原因であるバイオフィルムを、歯の面から除去する目的の基本治療を計画的に行います。
その方法は、2段階で進めていきます。
まずSTEP1で、歯ぐき周囲のバイオフィルムを超音波スケーラーという器械を使い除去します。
そしてSTEP2で、ポケットの中のバイオフィルムを、ハンドスケラーを使い、かき出すように除去します。
数回(おおよそ4~6回)に分け、除去する必要がありますので、期間は2~4ヶ月ほどかかります。
ここで大切なことは、私たちだけでバイオフィルムを取り除くのではなく、皆さんにも協力していただく必要があります。
むしろ、基本治療の中心は、皆様で、私たちはサポート役と考えていただいたほうがいいと思います。
なぜならバイオフィルムは、皆様のブラッシングの状態や、食事の取り方、もっと言うと生活全般の問題から、歯の表面に付き始めたものだからです。
ですから、「治療を受けに来る」のではなく「治療に参加する」お気持ちで、ブラッシングのチェックなど、予防指導をお受けいただきたいと思います。
そして、1回だけの歯ブラシチェックに終わらせずに、常に関心を持っていただくことが大切です。
継続していきましょう。
この基本治療の期間は、再発しない基礎を作る大切な段階でもあります。
なので、バイオフィルムの除去・ホームケア指導以外にも次のような処置もあわせて行います。
・ 問題のある歯の根の治療 ・ 緊急性のある虫歯の除去
・ かみ合わせを安定させる ・ 残せない歯の抜歯
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基本治療が終了し再評価検査を行って、バイオフィルムの除去の効果を確認できてから、むし歯の穴の修復や、歯のない部分にブリッジや入れ歯、患者様のご希望によっては移植、インプラントのための手術に入ります。
修正治療の期間は、患者さまのお口の状態やご希望をお聞きして、処置してまいりますので、一概に決められませんが、必要最小限の処置のみを行い、なるべく早くメインテナンスに入っていくことが大切であると、私たちは考えています。
小さなむし歯は、ホームケアとメインテナンスで大きくさせなければいいのです。
大切な歯ですから削る範囲はできるだけ小さく、そして削る時期も遅らせるべきです。
修正治療中も、基本治療で実践していただいた予防プログラムを確認し、時折必要な部分のクリーニングも忘れず行います。
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私たちの使命は、患者様に健康になっていただくこと。
そのために、ここまでかけた治療時間と費用をむだにしないよう、むし歯、歯周病の再発を防ぎ、健康なお口を維持していくためのプログラムに入ります。
ここで重要なことは、メインテナンスは、ホームケアとプロフェショナルケアの両方が必要で、メインテナンスに来てさえいれば、予防ができると考えるのは間違いです。
一緒にホームケアも頑張りましょう。
そして、3ヶ月に1回程度のメインテナンスを受けてください。

メインテナンスは、基本治療と同じ検査を処置の前に行い、問題があるか調べます。必要があれば、ブラッシングの再確認も行います。
そして専用の器具で、バイオフィルムの除去と歯のクリーニング(PMTC)を行います。

通常は30分程度ですが、悪化した部位が多い場合は、さらに時間をかけ徹底的にポケット内を洗浄いたします。
最後に検診と検査結果をご説明し、問題がなければ次回のメインテナンスのご予約をお取りいただきます。
もし検診で治療が必要な場所があれば、メインテナンスとは別に治療を行い、終了後は再びメインテナンスに戻ります。
ここで今までご説明してきた「当院の治療の流れ」に沿って処置し、
現在もメインテナンスに来ていただいている患者様の1例をご覧下さい。
60歳代 女性 「前歯が欠けた」が主訴でした。
①初診時は、歯ぐきからの出血が全体の72%あり、中程度の歯周炎(4mm以上のポケットが52ヶ所)でした。
歯周病の状態を説明し、バイオフィルムをしっかり除去することが必要であることを伝え、基本治療を開始しました。
②基本治療には、約4ヶ月がかかりました。
ホームケアの大切さをお話し、ご協力をいただくことができた結果、見違えるくらいに歯ぐきの色、形が健康になりました。
この期間は全て仮歯でいていただき、1本もつめたり、かぶせたりしていません。患者様は、基本治療の大切さをしっかりと理解され、何も言わず来院してくださいました。
出血は17.5%に減少し、歯ぐきも引き締まり、4mm以上のポケットは4箇所になりました。
③基本治療の後、ほぼ全部の歯にかぶせ物を入れ、入れ歯を作り直しました。
治療期間が少し長くなってしまったため、歯ぐきが少し腫れ始めています。すぐにメインテナンスに入りました。
出血は、5.3% 4mm以上のポケットは5箇所でした。
④メインテナンスに入り3年が経過しました。
この頃から、下の前歯の歯ぐきの引き締まりがしっかり見られるようになりました。歯と歯の間の隙間が大きくなっています。
ホームケアがしっかりと定着し、毎日頑張っていただいていることが 何よりも嬉しいです。
出血は9.2% 4mm以上のポケットは5箇所でした。
⑤初診から10年経過した今も、3ヶ月に1回のメインテナンスに欠かさず来ていただいています。この間に私が治療した歯は、1本もありません。
入れ歯も丁寧に使っていただいています。
以前あった下の前歯の隙間を、引き締まった歯ぐきが埋め始めています。本当に健康になった証です。
出血は7.9% 4mm以上のポケットは1箇所にまで少なくなりました。これからもきっと、メインテナンスに来ていただけることでしょう。






